2010年2月6日(土)午後5時30~、TBS系列(山陽放送)「報道特集NEXT」の番組内で、歯科技工物問題に関して放送がありました.
http://www.tbs.co.jp/houtoku/onair/
報道された問題点は
・ 歯科医が指示して頼んだものとは異なる材料で作製されていた
・ 日本では25年前に使用が禁止されている「有害金属ベリリウム」が混入していた
・ 歯科技工物の安全性をどう確保するするのか?
・ 金属アレルギーが増えている.小さな水ぶくれが手のひらや足の裏にでき、皮膚が荒れてしまうだけでなく、放っておくと、胸や首、腰などの骨や関節が激しい炎症を起こし、激痛をもたらすこともある恐ろしい病である
・ ニッケル,コバルト,水銀,パラジウム等の歯科用金属を使ったパッチテストで陽性が増えている.
・ 中国での歯科技工のレベルは日本の30年前のレベルである.中国と日本では安全性に対する基準が違いすぎる.日本の厚生労働省研究班は報告で輸出型大型歯科技工所は問題ないとしている.
歯科理工学の教授が何人も取材に応じていました。
歯科理工学?聞きなれない名前ですよね.
主に歯科で使用する材料や器具の安全性や開発について研究を行っています.
院長吉本彰夫は(社)日本歯科理工学会のDentalMaterialsSeniorAdviserつまり指導医という立場を行っておりますので詳しくご紹介させていただきます.
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsdmd/index.shtml
さて歯科理工学の専門家として,一番懸念していることは,金属アレルギー患者さんが増えていることです.
金属アレルギーを引き起こす可能性のある材質を口腔内に入れるべきではないということです.
なぜ日本の厚生労働省研究班は報告で輸出型大型歯科技工所は問題ないとしたと思いますか?
これだけ金属アレルギーの患者さんが増えている.
今後も間違いなく増えていく.
どう考えても普通の方はおかしいと感じますよね.
これは日本の保険制度で認めている材質基準を崩せないという問題が前提条件としてあるためです.
この問題を否定してしまうと財政的問題で歯科を保険で診るためには今の何十倍何百倍以上もの税金を投入しなければ安全性を維持できなくなってしまうという問題が表面化してしまいます.
中国での歯科技工のレベルは日本の30年前のレベルであるとの報道がありましたが,実は日本自身がヨーロッパ諸国の安全基準からいうと何十年も遅れているのです.
以前にも記載したブログの内容ですが再度載せますね.
https://www.8181118.com/director/2009/11/post-16.php
https://www.8181118.com/director/2009/11/post-17.php
最近、患者さまからよく質問されることがあります。
「金属アレルギーで問題になっているアマルガム治療が自分の口の中にされており心配」
という内容です。
アマルガム治療とは、虫歯治療などの際に、歯を削って詰め物をします。その時に歯の詰め物に使われているアマルガムという金属が水銀中毒、また今よく騒がれている金属アレルギーを引き起こす原因となっている、と言われています。
あまりにも多いご質問なので、一度ここで私の考えについてお話させて頂きます。
近年マスコミでもアマルガム治療について、小さな水ぶくれが手のひらや足の裏にでき、皮膚が荒れてしまうだけでなく、放っておくと、胸や首、腰などの骨や関節が激しい炎症を起こし、激痛をもたらすこともある恐ろしい病と大々的に取り上げられご心配かと思います。
金属アレルギー検査をされてみて、もしアマルガムが溶け出しているようであれば治療をされることをおすすめします。
日本ではアマルガム治療は、保険診療で認められており、現在も一般的な治療として使われています。
アマルガムは、銀、スズ、銅、少量の亜鉛、そして残りの40~50%が水銀で構成されています。
この治療には賛否両論あります。
アメリカ歯科医師会(ADA)は、アマルガムに含まれる水銀は「安全」である、としています。
それに対し、スウェーデンやドイツでは使用が禁止されており、イギリスでも妊婦さんへの使用には警告を発しています。
私自身、学生時代にはアマルガムから生じる水銀よりも、食物や空気から生じる水銀の量の方が
多いことを教わりました。
しかし、これは実験室のお話であって、このアマルガムの予後は術者の腕によって、また口腔内の環境によって大きく左右されます。
実際は3年以内でほとんどのアマルガムは劣化を示しており、約10年後には
70%が溶けて消失するという結果を出している研究者もいます。
このような理由から私は吉本歯科医院では、虫歯治療に際し、「アマルガム治療」を行っておりません。
実際患者さんのお口の中で穴がポツポツと空いて溶け出していたり、ヒビが入ったり割れていることがほとんどであります。
簡単に口の中から金属が溶け出して体内に取り込まれている状況をみると、別の材料に置き換えた方が良いかと思われます。
確かに症状のない患者さんの方が数は多いかもしれません。
しかし、金属アレルギーは「なってから対策を考える」よりも、
「なる前に防ぐ」ほうが、望ましいといえます。
ただし、奥歯のかみ合わせの強い力がかかる部分では、保険診療で認められているコンポジットレジンなどの弱い材料に代えた場合、将来的にすり減ってかみ合わせの高さが変わって顎や全身に悪い影響を及ぼしかねないことや、破折して虫歯になりやすくなることもあります。
前回のブログにも紹介しました金属アレルギーですが、日本歯科新聞社発行の、「日本歯科新聞」2006年8月29日第1478号7面に掲載された吉本彰夫の記事「金属アレルギーを我々は食い止められるだろうか?」もご紹介します。
「金属アレルギーを我々は食い止められるだろうか?」
(社)日本補綴歯科学会第115回学術大会(札幌)に参加して
吉本彰夫
香川県高松市開業
日本補綴歯科学会専門医
日本接着歯学会認定医
平成18年7月8日(土),9日(日)札幌市にて(社)日本補綴歯科学会第115回学術大会が開催された。参加して感じた一開業医の雑感である。
「咬合・咀嚼が創る健康長寿」をメインテーマとし、多数の発表や講演が行われた。
多くの発表の中で特に気になる発表があった。
金属アレルギーの患者数推移とアレルゲン金属の種類である。
水銀アマルガムが「掌蹠膿疱症」を引き起こすことは我々にも周知の事実である。
また近年マスコミに、小さな水ぶくれが手のひらや足の裏にでき、皮膚が荒れてしまうだけでなく、放っておくと、胸や首、腰などの骨や関節が激しい炎症を起こし、激痛をもたらすこともある恐ろしい病と大々的に取り上げられた。
保険診療に普段使用しているパラジウムによる金属アレルギー患者数が増えている。
比率が増えている。いかがだろうか?
私自身10年ほど前の診療で、金銀パラジウム合金の補綴物が半年ほどで変色するケースを経験したことがある。
材料的な問題か鋳造欠陥によるものかとあまり気にも止めていなかった。
同一患者の別の部位に補綴を行った際、口腔内写真を撮影した。
半年後のリコール。
またしても変色していた。まさか!と思った。
当時、患者には個人差があるため唾液のpHが酸性なのかもしれないとリトマス試験紙にて確認したが、変色は認められなかった。
患者は保険診療を希望していたため、「色が変わっても機能的には問題ないですよ。安全ですよ。」とお話した。
不安がよぎっていた。
今回東京医科歯科大学から「近年における歯科アレルギー外来受診患者の病態およびパッチテスト陽性元素の変化」と題してポスター発表が行われた。
以前にも同様の他大学の発表を見たことがある。10年来の不安がよみがえってきた。
将来の恐ろしい予感がはしる。
確かに金銀パラジウム合金が近年何百万人とういう患者さんに使用されている。
金属アレルギーがパラジウムで増えて当然の結果なのかもしれない。
金属アレルギーを引き起こすのは金属ではなく、金属イオンである。確かに短期間に何らかの症状を呈する患者さんもいる。
しかし多くは何年も何十年も経過してから症状が現れてくる。
確かに症状のない患者さんの方が数は多いかもしれない。
限られた国家予算の中で贅沢は言えないのかも知れない。
しかし金属アレルギーは「なってから対策を考える」よりも、「なる前に防ぐ」ほうが、望ましいといえるのではないでしょうか?
少なくとも私の家族や身内にはそのような治療をしたくない。
シンポジウムⅡではメタルフリー補綴歯科の最前線として最新の金属を使わない治療や接着治療の重要性が論議された。
特に高橋英登(東京支部)先生の材料の特性を熟知したコアや接着治療の重要性、操作一つ一つの重要性、的確で確実な処理の重要性を教わった。
シラン処理の活性化は早速臨床に取り入れさせていただいた。
メタルフリーの時代がやってくる予感がした。