香川県高松市の噛み合わせ専門歯科医院 吉本歯科医院の吉本彰夫です。
歯医者さんで撮影するレントゲン写真ありますよね?
レントゲン写真の中にはあなたの歯の重要な情報が詰まっています。
レントゲン写真の見方を知ると将来あなたの歯がどうなっていくかまでわかります。お伝えしますね。
歯科のレントゲン写真(エックス線写真)は重要な情報
レントゲン写真は誰しも撮影された体験がおありになると思います。私たちの歯科においてお口の中のレントゲン写真は頻繁に撮影します。
あなたも今までいろいろな歯医者さんで多くのレントゲン写真を撮影されたのではないでしょうか?
特に歯医者さんでは目で見ただけではわらからない部分が多いので何度もレントゲン写真を撮影することが多いのです。
しかし、せっかく撮影したレントゲン写真ですが、患者さんご自身で見方がわかる、という方は実はほとんどいらっしゃいません。
歯医者さんに画面を見ながら説明を受けることはあっても自分自身で「なるほどここがこうなっているから、こうなんだ」と自分で診かたがわかるまで説明を受けている方はほとんどいらっしゃらないのです。
吉本歯科医院ではお越しになられる全ての患者さんに対して「歯医者さんでのレントゲンの見方」をお教えしています。
ご自分の歯のレントゲン写真を自分自身で正確に「診る」ことができれば
「私の歯は溶け始めている」
「この歯が倒れてきている」
「この歯の骨はまだしっかりある」
ということが一目瞭然です。
歯医者さんでのレントゲン写真は実は患者様ご自身の重要な情報です。
ご自分でレントゲン写真の見方を知っていると、歯科医師と一緒に現状をしっかりと考え、今後どのような治療を選択すればいいのか、どうやって歯周病等を予防していけばいいのかがわかります。
どうぞご自分の歯を失わないための情報としてご活用下さい。
歯科のレントゲン写真の種類
それでは早速歯医者さんで撮影するレントゲン写真の種類をお話していきますね。歯医者さんで撮影するレントゲン写真は3つあります。
①デンタルレントゲン写真(奥歯なら奥歯だけ、最も小さい範囲のみを撮影するもの)
②パノラマレントゲン写真(歯だけでなく顎(あご)全体を撮影するもの。顎関節もうつります)
③CT画像写真
(CTとはComputed Tomographyという英語の頭文字です。技術としては、X(エックス)線検査の一種になります。レントゲンに高度なコンピュータを組み合わせて詳しく検査ができる機械と考えれば、わかりやすいと思います。X線管が、X線を出しながら体を一周し人体を輪切りにしたような断面画像や、立体的な画像を得ることができます。3次元的な立体画像で見ることができます。
①②③すべて「レントゲン写真(エックス線写真)」になります。「レントゲン」はエックス線を初めて発見した物理学者の名前です。吉本歯科医院ではエックス線は放射線の一種ですので被曝(ひばく)も考慮して部位や用途によって使い分けています。
撮影する範囲の大小や見え方に違いはありますが
レントゲン写真の基本的な見方というのは実はどれも同じです。
歯科レントゲン写真の見方の大きなポイント
歯医者さんで撮影したレントゲン写真を見る時には2つのポイントがあります。とても簡単なので覚えて下さいね!
吉本歯科医院で初診の患者さんが最もよく撮影するパノラマレントゲン写真を見ながら、実際のレントゲン写真の見方をお話していきますね。
パノラマレントゲン写真の大きなポイントは以下の2つだけです。とても簡単です。
①硬いものが白くうつる
②左右が逆にうつる(右側が向かって左、左側が向かって右)
これだけです。
①②を覚えて頂ければ大丈夫です。
口の中で硬いものとは歯、骨、金属の詰め物などです。
硬くないものは虫歯、骨や根の中にある神経、血管の通り道などです。
歯茎は柔らかいのではっきりとうつりません。
これらはどれも「レントゲン」ですので、サイズや写しているところの範囲は違えど、基本的な「見方」は同じです。
筋肉や関節、内臓等、やわらかい部分を見たい場合にはMRI(M-R-I)という撮影装置を使います。
さあ、実際にパノラマエックス線で撮影された写真画像をみてみましょう。
このパノラマレントゲン写真にうつっているのは歯と歯を支えている「骨」、そして左右の顎の関節全体です。鼻もうつります。
鼻の下あたりから顎、耳の下くらいまでの範囲と考えて下さいね。
赤い部分で線を引いているのが上下の歯です。
骨に埋まっている歯の状態です。
この写真からわかることは前歯は根っこが少ないです。
前歯は、立てようとしても前歯だけでは立つことができない存在です。
前歯に対して奥歯になればなるほど根っこの数も2本3本と増えていきます。
3本根っこの足がある奥歯はカメラの三脚のように自分でしっかり立つことができる存在なんですね。
ここからわかることは、前歯には前歯の役割、奥歯には奥歯の役割がありそれぞれ受け持つ役目と機能が違うってことです。
前歯の代わりを奥歯にはできないし、奥歯には前歯の代わりはできません。どの歯もあなたの大事な1本なんです。
歯科レントゲン写真でみる顎関節
パノラマレントゲン写真での顎関節の見方です。
左右の顎(あご)の関節をみてみましょう。
左右に黄色く記している部分が顎関節(がくかんせつ)、アゴの関節部分になります。
顎がカクカク音がしたり、顎が痛い、口が開きにくいといった症状がでている方は左右の顎関節がすり減っていたり左右が歪な形になっていることがありますのでこのパノラマレントゲン写真で確認することができます。
次の写真は歯科レントゲンで見る下顎の骨です。
赤く線を引いている部分が下の顎の骨部分になります。
硬い部分が白くうつります。
硬い部分とは骨です。
歯科レントゲンで見る上顎(あご)の骨
上側の歯は頭蓋骨と一体化
次に上の顎の骨をみていきましょう。
青い線の上側が上の顎の骨部分になります。
上側の顎って実は動かないんです。
これは頭蓋骨の模型です。
上の歯というのは実は上顎と頭の骨が一体化しているんです。
頭蓋骨が傾いた時に一緒にその角度に合わせて動くことはあるのですが、上の歯やアゴが単独が頭蓋骨からどこか別の方向へ動いてしまうということはないのです。
それに対して下顎というのは頭から筋肉というヒモでもって、下の歯は下顎と一体化した状態でぶら下がっているだけなんです。
前にも後ろにも右にも左にも上下にも360度振り子のように自由に動けるようになっているのです。
写真左で下の手で支えているのが下の顎です。
写真で上の手で支えているのが一体化された上の歯と上顎と頭です。
緑のヒモは筋肉と思って下さい。
下顎は筋肉でぶら下がっているだけ、です。
ご覧のように上の歯は頭蓋骨にくっついている存在です。
上顎の骨には鼻の部屋(鼻腔)や4つの副鼻腔が左右に空洞のようにあいています。
空洞ですので黒くうつります。
パノラマエックス線写真では、鼻腔と副鼻腔の一つである上顎洞がうつります。
歯周病が進行し、口の部屋と鼻と部屋の壁(骨)が溶け、口と鼻が貫通してしまっている場合にもレントゲン写真で確認することができます。
歯科レントゲンで見る下顎管
さあ、では次のレントゲン写真をご覧ください。
下顎の骨の部分に黄色い線を引いている部分があります。ここにはうっすらとですが白い線が確認できます。
これは下顎管といい大きな神経と血管が通っている管です。
この管はとても重要なものなんです。
インプラント手術や大きな外科手術を行う時にはこの下顎管に傷をつけないようにしなくてはいけません。
下顎管は神経血管を通じて歯に栄養や血液を送っているとても重要なものです。
私たちの歯や歯茎が痛いと感じるのもこの重要な神経がきちんと機能しているからなのです。
歯の神経が生きているかどうかの診断
レントゲン写真を見ると「歯の神経が生きているのか死んでいるのか?」の判断はつきますか?
というご質問を大変多く頂きます。
結論から言えばレントゲン写真だけでは歯の神経が生きているか死んでいるかの判断はつきません。
70%くらいは当たりますという程度です。
確定はできません。
歯の神経を取る治療をしており薬や人工物が入っている場合にはレントゲン写真に写りますが、黒く写っているとはいえ歯の神経が生きてるとは判断はつきません。
レントゲン写真でわかることは硬い物が白く写り、柔らかいものが黒く写るということでしたよね?
硬いものとは「骨」と「歯」です。
骨と歯は硬いのでレントゲンには白く映るんです。
柔らかいものはといえば歯肉や血管、神経や流れている血液です。
生きている歯の周囲の骨が溶けていることもあります。
畑に大根が埋まっているイメージ
さあ、次に私たち吉本歯科医院では患者さんにどうやってレントゲン写真の見方をご説明しているかお話しますね。
まずこの図をご覧ください。
歯は何で支えられているか知っていますか?
黄色い部分が、畑だとイメージして下さい。畑に埋まっているのは大根です。
畑=骨
大根=歯
畑に大根が埋まっているとイメージして下さいね。
下図のように骨がしっかりある方もいらっしゃいます。元々はみなさん骨があったはずです。
歯周病やなんらかの理由で次の図のように歯が溶けて少なくなっている方もいらっしゃいます。
たとえばこの図はモグラさんが歯を削ってますよね(笑)
これは親知らずの事例です。虫が喰ったように歯が欠けたり削られたり穴があいたりしてきます。
下顎の左右に生えていた親知らずは一生懸命大根を喰い潰しちゃってるんですよね
どんどんどんどん隣の歯をくいつぶしていってしまいます。
レントゲン写真が自分で理解できるようになると今後自分の歯や咬み合わせ状態がどのように変化していくのか、将来何が起こるのか?推察することができるのです。
歯を支えている骨部分がもともとはこれだけの量があります。
しかし骨が少なくなるとこんな風になってしまうのです。
怖いですよね。
骨が痩せた状態で硬いお食事をしてしまうと歯が抜け落ちてしまうイメージは容易に想像がつきます。
レントゲン写真で見る親知らずの症例
さあ、ではこのレントゲン写真では何が起こっているのみてみましょう。
右下の一番奥に斜めに生えている歯がありますね。これが親知らずなんです。
親しらずは矢印の方向に隣の歯たちをエイッエイッと押し続けているんです。
親しらずが矢印方向手前に歯を押す力により隣の歯が下から上に突き上げられているのがわかります。
歯っていうのは頭でっかちの形態なんですね。
頭でっかちなので歯の頭部分に引っかかって上に押し上げられてしまうんです。
かみ合う上の歯はもう抜けてなくなっているため押し上げられた歯はどんどんどんどんさらに押し上げられます。
上に押し上げられた隣の歯たちはドミノ倒しのように横へ横へと前方へ前方へ倒れ続けていきます。
この押す力は実はずっと続きます。
わずかな力でも押し続けることにより歯並びはどんどん崩れます。
怖いですよね。
歯は一生動き続けるものだからです。
さあ、次のレントゲン写真を見てみましょう。
赤い線を引いているのは歯の神経です。
わかりやすく手前の7番目の歯の後ろ側の根と神経血管部分にラインを引いています(本来は右の歯のように神経血管が通っているトンネルの状態ですので、黒い線となって写ります)。
「親知らず」8がお隣の7番目の歯、6番目の歯に対して横にむいてきてるわけですね。
さあ、この親知らず放置しておくとどうなると思いますか?
歯の神経が圧迫されて痛くなっていくのです。手前の歯に穴をあけていくのです。
この親知らずは横に倒れていますから、自然に何十年待っていても口の中から見える部分まで絶対に生えてきません。
ほうっておいても上向きに出てこないのです。
親知らずは生えてきたら抜きましょう、親知らずは歯茎に隠れてるから抜くのたいへんですから、腫れますからっと言って抜かずに置いておくと、こんな風になってしまうこともあるのです。
さあ、放っておくとどうなってしまったか見えますか?
なんと、親知らずによって、手前の歯の神経がちょんとブチ切られていますよね!
昔ゲームセンターであったパックマン(年代によってはわかりませんね^^:)をイメージして下さい。
パックマンに歯の神経を食べられてしまっています。
歯の神経が切られているので患者さんは噛むとものすごく痛がっています。
歯の神経血管は顎の後ろから顎骨の深い部分中を通って歯の根から入ってくるんです。
ここをちょんと切られるわけですから、とんでもなく痛いのです。
「何とか歯を残してください、親知らずを抜きますから」と患者さんはおっしゃいました。
しかし、すでに親知らずのお隣の歯(7番目の歯)の神経が切れていますから、残念ながら手遅れなのです。
なので、「親知らず」は他の歯に影響が出る前に抜いたほうが良いと私は考えています。
また、磨けない磨きにくいということも分かると思います。
磨けないということによって何が起こるんでしょうか。
8番目と7番目の歯の間に汚れが溜まっていきます。
そこが磨けないので腫れていきます。これを智歯周囲炎と専門用語では言います。
「親知らずが腫れて痛いんです!」と言われる方のほとんどがこれであります。
歯医者さんのレントゲン写真では将来起こることまでわかってしまうんです。
まとめ
歯医者さんのレントゲン写真をあなたご自身で「診ることができる」ということは今後あなた自身の歯がどうなっていくかをある程度推測することができるということを意味します。
かみ合わせはどんどん変わっていきます。
歯は一生動き続けるからです。
歯はわずかですが死ぬまで動くのです。噛み合わせバランスをきちんとすることが歯を失わないためには最も重要なことです。
そのためにも歯科医院でのレントゲン写真の見方はぜひあなたご自身でみられるようになって頂ければ幸いです。